本を読むときに、テキストに蛍光ラインや赤線を引いてきました。

でも、引いただけで、そのまま放置されていました。

せっかく、そのときに何かを感じて引いた蛍光ライン・・・

そんな蛍光ラインたちをときどき、ここに書き写して行く事にしました。

26. 『マネーロンダリング入門』 p149 橘玲 (幻冬舎新書)

1929年、バチカンは独裁者ムッソリーニとのあいだでラテラノ条約を結び、「主権国家」としての地位とイタリアに対する免税特権を手にいれた。このとき、ムッソリーニは、バチカン市国以外の領地を放棄する代償として7億5000万リラ、現在の時価に換算して約1000億円を支払うことに合意した。この補償金が、その後の”バチカン株式会社”の資本金となった。当時の教皇ビオ11世は、財産管理局を新設しベルナルディーノ・ノガーラというユダヤ人にその管理を任せた。ノガーラ家はユダヤ教を捨ててカトリックに改宗しており、兄は神父として教皇に仕えていた。ノガーラの投資家としての手腕には目を見張るものがあった。大株主となった企業には教皇の親族を経営陣に送り込み、損害を被りそうになるとムッソリーニに高値で買い取らせ、イタリアの敗北を予測するや資産を金塊に替えて巨額の利益を得た。(中略)1958年にノガーラが死んだとき、バチカンは少なく見積もっても10億ドルの資産を保有し、そこから毎年4000万ドルの利益を得ていた。ある枢機卿は、「イエス・キリストの次にカトリック教会に起こった大事件はノガーラを得たことだ」とまで述べた。


引用部分は、国際的なマネーロンダリングにバチカンが関わっていた事件を紹介するところで、バチカンが金融資産を運用することになった経緯を説明した一文だ。巨額のマネーの周りには欲ぼけしたシロアリが群がり、やがて、強欲に目がくらみ、犯罪(マネーロンダリング)に手を染めて行く過程が、本書では描かれている。枢機卿といえば、本来なら精神的な指導者として、高い見識と実績を持つ人物でなくてはならないと思うのだが、引用の最後にある言葉がバチカンという組織でさえ、マネー神話に絡めとられていることを示唆している。

投稿日:2012-10-10